喪黒福造の

喪黒福造の「出会ったら破滅する妖」みたいな在り方が好きでした。

文庫版の後書きによると『ファウスト』のメフィストフェレスにヒントを得たキャラクターだったそうなので、やっぱり悪魔だったんだよな~と思っています……。

おそらく『笑ゥせぇるすまん』のお話といえば「夢を叶える商品やサービスを紹介して契約を破ったら破滅する話」をご想像される方が多いのではないかと思いますが、実は他にもありまして

「喪黒さんが率先して罠に嵌めて社会的にあるいは物理的に殺す話」や「実質ほぼ狂言回し、たぶん喪黒さんに会わなくてもこうなってたろうなという話」などもあるんですよね。

原作第1話からして友達のいない男の孤独に付け込み罠に嵌め社会的に破滅させてから「これが私の趣味なのです……」で締めている。この人は喪黒さんの誘いに乗っただけで、なんの約束も破ってないのに。

最終話付近の81話にいたっては、喪黒さんの誘いに乗らないように自分を律していた人を罠に嵌めてまで堕としていた。ひ、ひどい……。

そうやって、喪黒さんは人間の堕ちる顛末を楽しんでいるなという感じがあります。

私自身は、子供の頃にアニメで観た「月下美人」のラストシーンの記憶が最も強く、理不尽なホラーものという印象を持っていましたが、大人になって原作を読んでからは大人の物悲しさも感じるようになりました。

喪黒さんの忠告を無視したら終わりどころではなくて、まず彼に目をつけられて、名刺を渡された時点で99%詰む、なぜならココロにスキマがある人間は悪魔に付け入られてしまうものだから……ということなのかなと……。

そんな大人の物悲しさを、藤子F先生が子供向けにお描きになると『ドラえもん』「パパもあまえんぼ」の名台詞「おとなって、かわいそうだね。」になり、藤子A先生が大人向けにお描きになると、甘えられる人を見つけた大人の男性が全裸で赤ちゃん返りしたまま元に戻らなくなる(9話「たのもしい顔」)というお話になるのかな……とか、

子供にしか見えない妖精の話はしばしばありますが、逆に、喪黒さんが見えるようになったら大人になってしまったということなのかもしれない……まあその後は破滅するわけだが……とか、

そんなようなことを、藤子A先生の訃報を伺った後ずっと考えていました。

好きな作品はたくさんありますが、中でも『笑ゥせぇるすまん』の存在感の大きさをしみじみ感じております。

心よりお悔やみ申し上げます。

(補足:
「99%詰む」と前述いたしましたが、というのも少数ながら例外がありまして、夢のような逃避行を叶えたものの喪黒さんの助言が結果的に功を奏して元の世界に戻っていった……というものもあります。42話の「夜行列車」です。)

【04/08】微修正

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