映画「フリークスアウト」

予告を観て「5月になったら絶対に観にいくぞ」と思っていたのに、気づいたら都内の上映が終わっていたので焦って厚木まで観に行きました。

以下、良かったメモ

ナチス・ドイツとサーカス(+見世物小屋)の薄暗い雰囲気は予告動画通りだったものの
ハリウッド風の痛快超人異能力バトルを想像していたところ、実際に観ると良い意味で違っていました。
敵も味方も第三勢力も戦争によって色んな意味でボロボロでした。敵側のボスことフランツの秘書が映画のけっこう最初の方で「戦争に勝者はいませんわ」と言っていたのが後になって余計に沁みました。

ここからネタバレ

このサーカスのメンバーは決して正義感に燃える超人たちの集まりではありませんでした。
能力を使う理由は主に飯の種、護身、なんやかやバラバラになった後ようやく結束して仲間を救う、困っている人が近くにいたら良心に従って助ける……程度であって、「世界のためにこの力でナチスをやっつけて戦争を止めてやる」的なお話ではないところ、そもそも彼ら自身、戦禍に巻き込まれていつ死ぬかわからず、ドイツ兵の理不尽な暴力に怯えながら生きねばならないところは他の人と一緒で、なんとか仲間たちと一緒に生き延びる方法を探した結果最終的にナチスと戦うことになったところが、「超人ではあるけど、普通の人の延長線上にいる」という感じがしていいなあと思いました。ドイツ軍とガチで戦っていたのは主に途中から登場するパルチザンですし。このキャラもみんなよかったなあ。

あと敵のボスもよかった。
敵はナチス・ドイツのサーカスで……と来たので、私は最初はストレートな勧善懲悪を想像してまして、実際フランツは悪人ではあったのですが、でも掘り下げられてみると実は主人公たちとは対照的に、自分自身の持つ異能によって夢を打ち砕かれた結果狂ってしまったようなところがあり、もの悲しさが好きになりました。
異能者としての自分、サーカス団長の自分を受け入れて心から愛してくれる女性がいるのに、どうしても優秀な兄と一緒にドイツ軍人の仲間入りをしたかった必死さが時に哀れですらあり、ただ怖いだけのキャラではありませんでした。
最終的に、犯して来た悪事、奪って来た命のツケは物語の中できっちり払わされているし、あくまで悪役として丁寧に描かれているなと感じます。
未来予知の能力の演出が印象的だったのと、未来スケッチがスタッフロールでの小道具として粋な演出をしていてこれも好きです。

追記

やっぱりフランツのことを噛み締めてしまうなあ。
主人公側も本当は普通の人と同じように暮らしたかったのに、異能や他の人とは違う容姿のためにそれが叶えられなかった、それでも家族同然に愛してくれる人が仕事をくれたし、理不尽を飲み込んでなんとか生きていく道筋を自分たちで作っていくことができたわけで、でもそれは彼らがもともと持っていた強さでもあると思うんですよね。
フランツも愛する女性と共にサーカス団長として、12本指のピアニストとして生きていく選択肢はあったけれど、それは断じて自分の望む生き方ではないし、夢を諦めることが耐えられなかった……という、映画内でやったことは本当に残虐非道ですし、肝心の夢も「兄と同じナチスの軍人になって総統に貢献したい」なので、とても今の我々が乗っかれるものじゃないんですけど、でも、発狂に至る心情はある程度推し量ることができるのではないかというか……誰もフランツを気にかけなかったからこうなった、ではないところ、ただただ自分の気質ゆえに止まることができなかったというところ、うう……。

フランツに超人探し(と、それにつらなる虐殺)ができるような権力が無かったらもうちょっと違う人生になってたんですかね……。

予告でデュビアみたいな虫が群がって鉤十字の形になるところ、まるでオカルティックな演出の宣戦布告か何かみたいに見えますけど、実際は虫使いの青年がベルリンサーカスに入りたくて売り込んでたシーンだったのでちょっと笑ってしまった。生きるためには何にでも媚を売るし命の危険が迫ったら躊躇なく悪態を突く軽さがリアルでよかった。

以下ぼやき
お恥ずかしながら実は水面下でサーカス×異能力バトルのネームを切っていたので被ったかと思ってヒヤリとしましたがぜんぜんそんなことはなかった……。こっちは面白くなりそうかどうかはぜんぜんわからない……。ネタ被りの恐怖は漫画家あるあるですよね……。

【08:19】全体的に調整。観た直後の興奮で書いてしまったので。
【10:36】追記
【11:05】全体的に調整。いい加減にしなさい。(自分に)

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